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Sam Prekop(サム・プレコップ)
Comma(コンマ)

THRILL-JP 52 / HEADZ 247 (原盤番号:THRILL 524)
価格:2,000円+税
2020.7.24 on sale ※US盤発売日:2020.8.21(→9.11に延期となりました)
フォーマット:CD / Digital(デジタル配信は当初の海外発売と同時の2020年8月21日のリリースとなります)

◎ライナーノーツ封入:柴崎祐二 / 福田教雄(Sweet Dreams Press)
◎日本盤のみボーナス・トラック1曲
(ジョン・マッケンタイアがミックスを手掛けた新曲)

◎日本先行発売


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※日本盤CDはボーナス・トラック&ライナーノーツ付!
名盤1st『Sam Prekop』、2nd『Who's Your New Professor』も併せてどうぞ!


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静かに流していると揺れる心が整い、
ボリュームを上げると胸が高鳴る。
音の粒、ひとつひとつが美しい。
あらゆる感情に寄り添う、
とてつもない耳の快楽。
―― 片寄明人(GREAT3)

このアルバムからは、ザ・シー・アンド・ケイクの、
あの歌声は聞こえてこない。
にもかかわらず、これはまぎれもなく、
サム・プレコップの音楽だ。
これは電子音で奏でられた歌だ。
風景が目に浮かぶ。
それは、そう、もちろん、サム・プレコップが撮る写真の、あの風景だ。
―― 佐々木敦







ASUNAによるアルバム・レビュー


あまり気づかれてないかもしれないけど、自分が運営しているaotoao labelの『Casiotone Compilation Vol.7』にはサム・プレコップの曲が収録されている。なんで?と意外に思われるかもしれないが、そのきっかけは2014年11月のザ・シー・アンド・ケイクのジャパンツアーの時のこと。京都公演の翌日のオフに彼らを観光案内していた漫画家のMississippiさんの車内で、自分がHEADZからリリースした2枚組アルバム『Aihara 1825, City Heim Kiri B-207』のCDをかけた時に、この電子音って誰の?と食いついてきてくれたのがサム・プレコップだったそうで、その後に京都市内でCDを探したけど見つからなかったと自分のところに連絡があり、そこから交流が始まりカシオコンピにも興味を持ってくれて収録に至ったのだった。

彼のプライベートのSNS上では、アナログフィルムにこだわった写真の数々と同時に、新しく入手したモジュラー・シンセの機材テストを兼ねたようなセッション動画がよくアップされているのだけど(最近ではイタリアのFrap ToolsのUSTAで頻繁に遊んで/実験している様子がよく伺える)、作品として音源を構築する以前の、この実験段階において既に彼独自の音楽になっていることに驚くのだが、機材のアップデートによる新たな音色や音列パターンを発見/獲得できたという純粋な喜びも動画越しに伝わってくる。

彼が本格的にモジュラー・シンセサイザーによるソロ作品を発表し始めたのは10年前の『Old Punch Card』から。それまでのバンドやソロでの歌を中心としたスタイルとは全く異なった電子音楽作品として発表されたこのアルバムと前作『The Republic』は、彼のモノクロ写真の作品にも相通ずるように、自身の感性に触れた新しい対象を目の前にして、そのビビッドな感情をそのまま作品に放出するのではなく、一旦落ち着かせ、独自の方法論で定着液に浸し、時間をかけて研磨したテクスチャーをシンプルに構成したような作品だったと思う。

それらの実験段階を経てついにリリースされた新作『Comma』は、一転して、彼のカラー写真のように、秋晴れに飛行機雲が鮮やかに空を分割して進んでいく様を眺めるような爽快感のあるビートが打ち出され、決して大仰にはならないのにグッとくるメロディーが心地よく吹き抜けるような素晴らしい作品になっている。これは電子音楽であるにも関わらず、ザ・シー・アンド・ケイクや初期のソロ作のように楽曲志向が全面に押し出されていて、過去から現在に至るまでの音楽家としてのサム・プレコップの一つの到達点を示すようなアルバムとも言える。

ここでひとつ、自分も90年代末から電子音楽を制作してきた身として省みることがある。その頃から持ち運び可能になり低価格化した(といっても高かったけど…)ラップトップ・コンピュータの進化と音楽ソフトウェアの発展により、Max/Mspを筆頭とするソフトウェアでの電子音楽制作の世界的な流行と、その結果としての一般化と形骸化によって、当時のパイオニアたちは早々にそこから離脱し、再び演奏志向へと向かい、その過程で再び新しく見直されていったのがアナログ・シンセサイザーなどのハードウェアの電子機材であり、そこから現在のブームを引き起こす汎用化された新しいユーロラック・モジュラーシンセの開発に繋がってきた。そしてその隆盛のおおもとの1つには、以前のPCベースでの新しい電子音楽を築いてきたキース・フラートン・ウィットマン(Hrvatski)やグレッグ・デイヴィス(Autumn Records)、ジム・オルークらによるハードウェア・シンセサイザーの再評価によるそれらを使った演奏や作品の影響があり、今ではあまり省みられることはないけれど、現在の流れを作ってきたのはそういった90年代からの電子音楽のパイオニアたちだった。(ジム・オルークに関してはソフトウェアの時代においてもEMSのシンセを同時並行で使っていた)

余談かもしれないが、90年代末(から2002年くらいまで)当時、演奏の現場にラップトップ・コンピューターが置いてあるだけで、最先端の面白い演奏が行われるんじゃないかというようなオーラが、その見た目だけで醸し出されていて、それによって肝心の音楽そのものが評価しにくいようなバイアスがかかってしまうことがあったのだけど、それと同じような現象がここ数年のモジュラーシンセのブームにもみられ、それが使われているというだけで新しい音楽として早合点してしまいがちな現場によく遭遇するようになった。だけど結局はどんな機材を使っていようが、どういった音楽がそこで形作られているか、という音楽家の個性そのものに耳を傾ける必要がある。

そこで再び思い返されるのが、1997年に発表されたザ・シー・アンド・ケイクのリミックス企画盤『Two Gentlemen』だ。バンディ・K・ブラウン、ケーシー・ライス、ジム・オルークら当時の気鋭シカゴミュージシャンが揃う豪華なリミックス陣と並び、ボーナス曲として最後にひっそりと収録されているのがサム・プレコップによるソロ曲の「Early Chicago」と「The Sewing Machine」で、たぶんこの2曲が彼のソロとして最初に発表された電子音楽作品なのだけど、既にこの中で現在となんら変わらない楽曲が披露されている。つまるところ、彼はどんな機材を使っていたとしても、新しいテクノロジーを額面通り使うことはせずに、時代の変遷とともにアップデートされてゆく機材や考え方を自分自身の作品へと落とし込むことができる強い個性を持った音楽家であり、それらの長い経験と蓄積がこの新作『Comma』に結実したのだなと改めて感じた。

*日本盤CDにはボーナストラックも収録されており、アルバムの流れに完全に沿っていながらも、彼の日々更新されていくシンセ機材の変遷が垣間見えるような楽曲になっていて、次回作もそう遠くないのではと期待してしまう。(再来日も!)

―― ASUNA







ザ・シー・アンド・ケイクのデビューから25年以上、ソロ・アーティストとしても既に20年以上のキャリアを誇るサム・プレコップ。
2010年のサード・アルバム『Old Punch Card』以降は、バンドとの差異を図ってか、あの非常に魅惑的なヴォーカルを封印し、モジュラー・シンセサイザーをメインとしたインストゥルメンタル作品をリリースしてきたが、前作『The Republic』から5年半振りとなる新作アルバムは、ここ三作品の中では初めてリズムやビート・プログラミングを大胆に導入し、アナログ・シンセを中心に制作された(今作はモジュラー・シンセだけでなく、Roland SH-101やJUNO-106といったアナログ・シンセの名機、デジタル・シンセのElektron Digitoneも使用)インスト・アルバムながらも非常にポップな仕上がりとなっている。
Aphex Twinの名作『Selected Ambient Works 85-92』や『Selected Ambient Works Volume II』を始め、近年海外でも再評価が進む清水靖晃、尾島由郎、イノヤマランド他の80年代の日本のニューエイジやアンビエントの名作群(サムは『Kankyō Ongaku: Japanese Ambient, Environmental & New Age Music 1980-1990』リリース前より注目していました)、Basic Channel、Robert Hood等の90年代のミニマル・テクノの名盤にもインスパイアされた、ハイブリッドで新たなアンビエント感をも予感させる、懐かしくも瑞々しいポップ・アルバム(Thrill Jockeyが作成した資料ではブライアン・イーノやYMOに連なる作品と表現)を創み出した。
ミックスは現在、拠点をポートランドに移した、バンドメイトでもあるジョン・マッケンタイアが担当し、マスタリングにはNYのレーベル12Kを主宰し、坂本龍一のコラボレーターとして日本でも著名なテイラー・デュプリーを初起用。
日本盤のみボーナス・トラック1曲(ジョン・マッケンタイアがミックスを手掛けた全くの新曲)を収録。
CDは日本先行発売(約1ヶ月先行)。
ライナーノーツは、柴崎祐二と福田教雄(Sweet Dreams Press)が担当。







【収録曲】

1. Park Line パーク・ライン 5:12
2. Summer Places サマー・プレイシズ 3:44
3. Comma コンマ 2:39
4. September Remember セプテンバー・リメンバー 5:09
5. The New Last ザ・ニュー・ラスト 4:06
6. Approaching アプローチング 5:58
7. Circle Line  サークル・ライン 3:20
8. Never Met ネヴァー・メット 4:45
9. Wax Wing ワックス・ウィング 4:39
10. Above Our Heads アバヴ・アワー・ヘッズ 2:27
11. Parallels パラレルズ 2:38

Total Time:44:37


※ Track 11 …日本盤のみのボーナス・トラック(John McEntireミックスによる未発表の新曲)


Recorded in Chicago 2019 by Sam Prekop,
Mixed in Portland by John McEntire,
Mastered by Taylor Deupree, except track 11 mastered by Tatsuki Masuko.









Sam Prekop profile:

英ロンドン生まれ、米シカゴ育ちのサム・プレコップは、80年代後半よりShrimp Boatのメンバーとして注目され、1993年のShrimp Boat解散後にThe Sea and Cakeを結成。
1999年にはThe Sea and Cakeの活動と並行し、ジム・オルークのプロデュースによる初のソロ・アルバム『Sam Prekop』をリリース。
2005年にはジムを除く、1stソロ作と同じ録音メンバーによる2ndソロ・アルバム『Who's Your New Professor』を発表する。
初回盤が本人の手描きジャケットのCDであった2010年の『Old Punch Card』以降のソロ作は、モジュラー・シンセサイザーを主体とするインストゥルメンタル・アルバムをリリースしてきており、2015年にはアルバムの前半が映像作家のDavid Harttの同名のヴィデオ・インスタレーション用のスコアとして制作された『The Republic』(Pitchforkの「Overlooked Records 2015」の20枚に選出)を発表している。
Thrill Jockeyからの5枚のソロ・アルバム以外には、2012年に制作・公開された映像作家Tim Suttonによる映画『Pavilion』のスコアを手掛けており、2013年にブルックリンのFactory 25より映画のDVDとアナログ・レコードのサントラ盤が同梱された作品が発表されている。
2017年にはASUNAが主宰する8cm CD専門レーベル「aotoao」の名物コンピレーション・シリーズ『Casiotone Compilation』の第7弾に参加。
2019年にはジョン・マッケンタイアとのコラボ曲「Kreuzung」をポーランドのDon't Sit On My Vinyl!よりリリース(シュテファン・シュナイダーのMapstationとの10インチの限定66枚のスプリット・レコード)している。
2020年1月にはデジタル配信のみでMute Gospel(メンバーの一人Mike BoydはThrill Jockeyのスタッフ)とのスプリットEP(各2曲づつ収録)を発表している。
音楽家としてだけでなく、画家、写真家としても注目されており(20007年にはPRESSPOP INC.よりCD付の初の写真集『PHOTOGRAPHS』を発表している)、過去のThe Sea and Cakeやソロ作は勿論、本作『Comma』のジャケットに使用されている写真や絵もサム本人が手掛けている。











 


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